日越関係の最初の礎
日越関係の過去は、教科書に載っている年表だけではありません。それは、両国が何世紀にもわたって静かに積み重ねてきた関係の遺産でもあります。その遺産とは、善意、信頼、そして互いを尊重し合う姿勢であり、まさに今日の日越関係を安定的で揺るがないものにしている土台です。
16世紀、グエン朝のもとで交易が盛んだった時代、ホイアンには日本の商人たちが訪れ、国際貿易港として活気にあふれていました。当時、日本人は独自の町並みを形成し、絹・米・木材・工芸品などの交易を展開しました。それは単なる経済活動にとどまらず、文化的な交流と善意の象徴でもあり、互いを尊重し、対等に接するという日越関係の原点を形づくったと言えます。

19世紀から20世紀初頭にかけて、地域情勢の変化により交流は一時的に途絶えましたが、両国をつなぐ糸は完全には切れませんでした。例えば、1905~1909年の東遊運動では、多くのベトナムの志士たちが日本を訪れ、改革のヒントを求めました。これは、ベトナムが日本を学ぶべきモデルとして信頼していた証であり、どんな状況でも善意とつながりが続いていたことを示しています。

そして1973年、両国は正式に外交関係を樹立し、日越関係は近代的な転換点を迎えます。このとき、歴史からの“遺産”は、はっきりとした“戦略的な資産”となりました。日本はすぐにベトナム最大のODA供与国となり、ニャッタン橋、ノイバイ国際空港T2、ハノイ都市鉄道、高速道路など、多くのインフラ整備を支援しました。日本企業も、ベトナムが経済開放を始めたばかりの頃から投資を進めます。これらの協力は、経済的な価値にとどまらず、両国の間に長く築かれてきた信頼と尊重を示す確かな証にもなっています。

今日でも、この歴史からの遺産は確かに生き続けています。両国の関係は安定し、外交から経済、社会、教育に至るまで協力は加速。人々の間には自然な親近感があり、日本企業は安心してベトナムへ投資しています。言い換えれば、過去からの遺産は今も価値を生み、現在の協力を支え続けているのです。
過去を知るということは、ただ歴史を語るためではありません。長い年月をかけて培われてきた価値こそが、今日の揺るぎない協力関係の礎になっていることを理解するためでもあります。

