千年にわたり受け継がれる風習の流れを探る-ベトナム伝統的な慣習ーテト(4)

テトを彩る花々 ― 桃花、梅花金、そして三地域の文化的差異

まだ家の門をくぐる前であっても、街角に春の花がほころぶ光景を目にした瞬間、ベトナム人の心は大きく揺り動かされる。日本において四月の桜(さくら)が新たな始まりの象徴であるように、ベトナムでは春は色彩の饗宴によって定義される。北部の桃花(とうか)の深紅、南部の梅花(ばいか)の輝く黄金色。これらは単なる装飾ではなく、新年の安寧と繁栄を告げる象徴的存在である。

桃花 ― 北部の寒気に咲く五行の精華

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冷え込みと霧雨が漂う北部の冬空の下、桃花は凛とした温もりを放つ。古来の民間信仰では、桃花は五行思想の精華とされ、邪気を祓い、家に生気と平安をもたらす力を有すると信じられてきた。薄く繊細な花弁でありながら、厳寒の中で鮮やかに咲く姿は、しなやかで強靭な民族性を象徴している。

北部では桃花だけでなく、金柑(きんかん)の鉢植えも並べられる。桃花が春の「気配」を表すなら、金柑は現実的な「充実」を体現する。理想的な金柑の木は、熟した黄金色の果実、成長途中の青い実、清らかな白花、そして新芽を備える「四つの吉兆」を兼ね備えることが望ましい。それは多世代同居の象徴であり、「多福多才」への祈念でもある。

梅花 ― 南部の陽光が生む富貴の象徴

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一方、南部の梅花は開放的で華やかであり、温暖な気候を思わせる存在感を放つ。その黄金色は富貴・栄達・希望の象徴とされ、花が豊かに咲くほど新年の運気も満ちると信じられている。とりわけ五弁の梅花は「五福(幸福・幸運・長寿・成功・平和)」の顕現と解釈される。

元旦の朝に満開を迎えさせるため、旧暦十二月半ば頃に葉を摘み取る「落葉作業」が行われる。これは樹液を蕾へ集中させるための繊細な工程であり、人の手と自然の呼吸を調和させる営みである。その精神性は、日本の盆栽文化とも共通する。梅花は単なる植物ではなく、待望と丹念な世話の結晶である。

万寿菊と菊花 ― 健康長寿への祈り

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桃と梅に加え、万寿菊(マリーゴールド)や菊花もテトの風景を彩る。中部や南部の農村部では、玄関両側に万寿菊を対で置く光景が一般的である。その名の通り「長寿」を意味し、祖父母や両親の健やかな長命を願う象徴である。橙黄色の鮮烈な色彩と濃厚な香りは、素朴で温かな新年の空気を演出する。

水仙 ― 静謐と技巧の美

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最も雅趣に富む花文化として挙げられるのが、水仙である。特に旧ハノイでは、水仙の球根を彫刻的に整形し、白い根を「賢者の髭」のように整え、葉を優雅に湾曲させ、元旦に開花させる高度な技術が発達した。水仙の美は、清水・白根・緑葉・白花黄芯・芳香という五要素の調和にある。

この趣味は静寂と集中力を要し、日本の茶道や生け花にも通じる精神文化といえる。細部に宿る美を通じて心の平穏を見いだす営みである。

花市と「初春の福取り」

ハノイのクアンバー花市が夜通し賑わい、ホーチミン市ビンドン埠頭が色彩に包まれるように、花市はテトの活力の中心である。人々は単に購入するのではなく、「春を楽しむ」ために訪れ、自身にふさわしい「福の枝」を選ぶ。

かつては元旦未明に寺社の若枝を折って持ち帰る習俗があったが、現在は環境配慮の観点から鉢植えや花枝を購入する形へと転換している。「福を得る」という行為は、自然の再生力と善意への志向を象徴する儀礼的行為となっている。

花が結ぶ精神文化

桃の紅、梅の金、水仙の白。地域や気候は異なれど、いずれも自然への深い愛情と楽観精神を共有している。日本の桜が無常観を象徴する儚さを帯びるのに対し、ベトナムの正月花は数日間持続する開花を通じて、持続的な結束と希望を表現する。

霧雨の中で咲く桃花や、陽光の下で輝く梅花を前にするとき、人は単に植物を見ているのではない。そこには春そのもの、そして歴史と感情の積層が息づいている。新年の静けさの中で、花は最も雄弁な無言の言語として、自然美と家族の団欒を尊ぶ民族文化を物語るのである。

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